教授コラム  

Evolution of atopic dermatitis in the 21st century
大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗

 この度、防衛医科大皮膚科佐藤貴浩教授、大阪大皮膚科室田浩之準教授と片山が編集作業を担当しました、日本発のアトピー性皮膚炎の研究を取り纏めた教本を出版させて頂きました。
西岡清東京医科歯科大学名誉教授にはアトピー性皮膚炎の歴史と日本での概念や病態の移り変わりを巻頭に執筆頂きました。
また、お忙しい中、多くの先生にご自身のオリジナルな日本発の研究成果を執筆頂き、まさに日本でアトピー性皮膚炎の病態認識と治療がどう変化(進化)してきたかを取り纏める事ができたことは編者にとっては望外の喜びとなりました。日本のアトピー性皮膚炎の研究は東大の笹川正二先生、小嶋理一先生、京大の太藤重夫先生、上原正巳先生、田上八朗先生、名古屋大学の上田宏先生、長崎大の吉田彦太郎先生、大阪大の青木敏之先生、西岡清先生などの大先輩達が切り拓かれてきたかと思います。今回、そのお弟子さんを中心に長年に亘る研究成果として本書を発刊出来たことに改めて、関係者諸氏に感謝申し上げます。現在、アトピー性皮膚炎の病態はバリア異常とTh2アレルギー、そしてその結果として生じる痒みが大きな治療の標的となり、新しい外用剤や分子標的薬などが続々と登場していますが、Sulzberger先生がいみじくも述べられているように「正常人に対して、アトピー性の過敏性を獲得させる多様性因子が理解できるようになるまで、そしてこの多様性を直接制御できるようになるまではアトピー性皮膚炎の最善の治療は対症的ではあるが、無理のない局所ないし全身療法である」という言葉を忘れず、さらに病態研究が進み、ギリシア語でStrangeを意味する「Atopy」という名前が消える日を待っています。
Contents PDF
http://www.springer.com/gp/book/9789811055409 でも案内しています。


大阪大学皮膚科教授 片山一朗
平成30(2018)年1月12日