教授コラム  

植木宏明先生の思い出
大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗

 川崎医大元学長、名誉教授であった植木宏明先生が平成28年5月11日ご逝去された。また7月16日には植木先生を偲ぶ会が倉敷市で執り行われた。岡山大学の岩月啓氏先生からのご連絡では、生前植木先生と親交の深かった、皮膚科の先生方も参列されていたそうである。私自身は植木先生とは北里大学に赴任後から西山先生の紹介を頂き、皮膚脈管膠原病研究会で長年に亘りご指導を頂いた。植木先生との思い出はたくさんあるが、やはり日独皮膚科医学会でドレスデン、マールブルク、日本では横浜、奈良、長崎でご一緒させ頂き、いろいろなことを教えていただいたことが記憶に残っている。

1999年Happle教授が開催されたマールブルクでのライン川下り時のスナップ
(左から西岡清東京医科歯科大名誉教授、植木先生、片山)

 マールブルクでHapple教授が会頭を務められた時のライン川下りの船中で開催されたセミナーで、ドイツ語で講演された時にはその流暢なドイツ語に驚かされた。特に私が北里大学でシェーグレン症候群の皮膚症状に興味を持ち、紅斑、紫斑や口唇小唾液腺生検などで、LEとの違いや血管炎、乾燥症状の評価などよく議論させていただいた。その当時、環状紅斑はSCLEとしてLEの皮膚症状と考えられており、ドイツでもシェーグレン症候群は全く考慮されていなかったが植木先生はあきらかにLEとは異なる病態であるとして、Hautarztにも、総説を発表され、私の考えを支持していただいた。その後ドイツのミュンヘン大学からもビルマ人のシェーグレン症候群患者に生じた環状紅斑の報告がヨーロッパ圏から初めて発表された時は植木先生のお力と感謝した記憶がある。その縁で皮膚病診療のシェーグレン症候群の特集号を作っていただき(貼付1)
、総説を執筆させて頂いたのも私の皮膚科医人生の中では大きな出来事であった(貼付2)
植木先生は皮膚における免疫複合体の研究のパイオニアでSLEや血管炎、自己免疫水疱症の研究で大きな業績を上げられたが、お人柄通り非常に気さくでわけ隔てのない先生でいつも若い人との議論を楽しんでおられた。川崎医大の学長になられてからもよく声をかけて頂いた。特に皮膚脈管膠原病研究会では、西山茂夫先生、西岡清先生、西川武二先生、神崎保先生などとともに最前列に陣取られ、厳しい質問やコメントを頂いたもので、今、思い返しても、考えられないような豊饒な時間を共有させていただいたことに深く感謝したい。

2002年長崎で片山がポストコングレス学会を開催した時のスナップ
-長崎大学ポンペ会館にて-


2002年長崎で片山がポストコングレス学会を開催した時のスナップ
(左から植木先生、二人おいてドレスデン大学Moeurer教授、マールブルク大学Happle 教授)
-長崎グラーバー園にて-

 最後にご一緒の仕事をさせていただいたのはVisual Dermatologyでケブネル現象の特集を組まれた時で、私にも声をかけて頂き、ヒトアジュバント病を書かせていただいた。昨年、佐野榮春先生がご逝去されたが、植木先生も佐野先生同様大人の風格の漂う本当に教授と呼ぶにふさわしい方で、サイエンスと臨床のバランスが取れ、またユーモアに溢れた私の理想とする先生でした。長い間のご指導、本当にありがとうございました。
合掌          











平成28年8月1日