医局員コラム
アレルギー学会
学会会頭 斎藤博久
高輪プリンスホテル
2015.5月26-28日
大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗
 アレルギー学会は今年から年一回の開催となり、今後、毎年6月頃に開催予定である。昨年12月には専門医を対象とした教育実習プログラムが企画・開催され、多くの先生が参加されたようである。今、日本の専門医制度は独立法人の専門医認定機構が主導し、基盤18科+総合診療科の作成した教育プログラムに基づいて試験が行われ、学会とは独立して認定が開始される(認定のための研修期間は各科で異なる)。これは学会自体が学会員の専門医資格を認定することがCOIになる、また学会により、その合格率や教育プログラムに差があり、国民に理解される専門性を学会とは独立した外部組織が認定するということで開始された制度であるが、その構成理事や運営方法はまだ多くの学会のコンセンサスが得られていないのも事実である。アレルギー学会はその2階建て部分にあり、その位置づけ、研修プログラムの作成、将来的なアレルギー疾患の診療形態の在り方が論議されているが、専門医加算の問題やアレルギー科の標榜、旧制度での専門医の更新など多くの問題がまだ解決されていない。またアレルギー総合医をどのような形で専門医認定機構に理解してもらうかもまだ結論が得られていない。私もシンポジウム「Total Allergist の役割」で皮膚科領域における現状を紹介させていただいた。皮膚科医はアレルギー学会の専門医の資格がなくてもアトピー性皮膚炎や薬疹などの治療を行うことができる。専門医加算が認定されない現時点でアレルギー学会に参加する唯一の動機付けは他科の基礎分野の進歩を共有できることや治療ガイドラインなどの情報を勉強できることかと思う。今後アレルギー学会専門医がどのような方向に向かうかは全く不明であるが、西間三馨前理事長のご尽力で昨年6月に立法化された「アレルギー疾患対策基本法」は今後の日本のアレルギー学の方向性を考えるうえで大変重要で、そこに皮膚科医が参加し、アレルギー疾患の適切な診断、治療を行うことがいかに重要であるかをアレルギー学会の総力を挙げて国民へアピールしていく必要がある。このことが今後、最も重要なアレルギー学会の存在意義になるかもしれない。このシンポジウムを企画された西間先生からは我々が行っている大阪大学の新入生のアレルギー疾患検診も評価していただき、アレルギー疾患を横断的に理解できるアレルギー専門医の存在意義を再認識させていただいた。学会そのものに関してはプログラム改革の一環として今年から一般演題が査読性になり、非常にレベルが高くなった。我々も関与した生育医療センターのアレルギー疾患ハイリスク患者に対する出生時からのスキンケア介入を行うことでアレルギーマーチを阻止できる可能性に関する講演が大きな話題を集め、関連する会場は人であふれていた。この他、皮膚、粘膜常在菌とアレルギー疾患の発症、進展、抗原非得意的にサイトカイン依存性に活性化するInnate lymphoid cell、新しいバイマーカーなども興味深い講演が多くあり、今後その評価が論議されていくかと考える。皮膚科に関する講演、発表はますます減少傾向にあるが、われわれが中心となり、進めてきた汗の研究に関するシンポジウムがアレルギー学会では初めてあり、多くの会員が参加されていた。新たな切口でアトピー性皮膚炎などの病態に迫る努力を今後も継続していきたい。国際交流シンポジウムも今年からリニユーアルされ、英語での発表、討論が義務付けられたが、海外からの若い先生の発表もレベルの高い講演であった。免疫学会が臨床医の参加しにくい現状でアレルギー学会が果たす役割はますます大きくなるかと思うし、私が現在、理事長を務める日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会の改革と密接に関係せざるを得ない現状があり、また論議を深めていきたい

大阪大学大学院医学系研究科教授 片山一朗
平成27(2015)年6月20日