医局員コラム
それでも伸びよ、天を目ざして:2015年春 大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗

 今年も4月1日、7人の新しい皮膚科入局者を迎え、過日、入局歓迎会を開いた。今年は男性医師3人、女性医師4人の方で皆さん早くも病棟、関連病院で元気にスタートを切られている。スーパーローテートが開始されてはや10年が過ぎ日本の医療、医師教育制度が大きく変わった。特に研修医の大学離れ、医局離れ、そして大学院への進学者や海外留学希望者の減少が毎年この時期になると話題になる。その中でさらに2017年から専門医認定機構が新たな専門医制度を開始すること決定され、いまその制度上の問題点が論議されている(島田眞路、日本医事新報4732.2015.1.3、 JDAレター)。我々の原点である所属学会を無視した現在の新制度の問題点の詳細はまた島田眞路皮膚科学会理事長のコメントを参考にしていただきたいが、日本の専門医制度が基盤18学会+1学会のみではなく、多くのサブスペシャリテイー学会による専門医教育によっている現状を全く無視して新制度のプログラム作りが進行している事が大きな問題点であり、その先にある専門医の品質保証の担保とそのインセンテイブが全く考慮されていない点が挙げられる。実際、欧米の専門医の地位は非常に高く、日本の現状とは遥かにかけ離れた、若い人にとって大きなMotivationとなる待遇が得られる。逆にその対価として要求される大きな社会的責任、生涯に亘る研鑽や技術力の維持は非常に厳しいのは当然である。この10年のもう一つの問題点としてスーパーローテートシステム開始と平行して行われた大学院制度改革にともない、多くの基礎、臨床の教室が講座名称を変更し、特に基礎では何をやっている教室かが全く分からなくなった。確かにアメリカのように大統領がかわるとホワイトハウスのスタッフがすべて入れ替わるのと同様、大学でも教授がかわると、場合により開学以来蓄積されてきた多くの知的財産や貴重な医学資料、機器がすべて破棄され、そこでその教室の歴史に幕が下ろされる。scrap&buildにより新たな研究分野を創出するのは短期の結果が要求される科学の分野では重要かもしれないが、人間として,文化を継承して行く場合,大学の不毛化を加速させる危惧が常にある。大阪大学総長である平野俊夫先生が医学部長の頃、「大阪大学医学部の基礎教室がシャッター通り化している」との危惧を述べられ、大きく研究改革の方向に舵を切られ、最近は以前よりは活気が戻りつつあるが、新たな専門医制度の開始により、大学院への進学がさらに減少する事が予測される。ヨーロッパではどこに行っても新市街と旧市街が混在し、アメリカ型の量販店と伝統を引き継いだ職人が集まる商店街がうまく共存し、大切なその国の歴史、文化を後世に伝えている。翻って今の日本では日本の伝統ある職人芸が滅び、つい最近まで、そこ、ここにあった、地域の商店街が次々と消えていきつつある。大学というアカデミアでもその危機感を共有し、次の世代を育てていくのが我々の大きなや役割である。皮膚科という臨床医学を生涯の専門として選択し、我々の教室に参加された先生も是非自分自身の皮膚科学を確立し、次の世代に伝えて頂きたい。今年、皆さんに贈る言葉は大阪大学の偉大な先人で平野俊夫総長の師でもある山村雄一先生が平野先生に贈られた「樹はいくら伸びても天までとどかない。それでも伸びよ、天を目ざして」としたい。臨床医学とともに、その問題点を解決する基礎医学の分野にも是非、目を向け、楽しい皮膚科医生活を送ってください。

大阪大学大学院医学系研究科教授 片山一朗
平成27(2015)年4月吉日