医局員コラム
第45回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎総会学術大会
会長:森田栄伸 島根大学教授
会場:島根県民会館
会期:2015年11月20-22日
大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗

 元祖皮膚科医である大国主命がおられる島根での第45回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎総会学術大会に参加した、丁度日本中から神様が出雲に来られる神在月が重なり、そこここから神様の話し声が聞こえた〜ような、気がした。昨年の仙台の理事会からの懸案であった従来の任意団体から一般社団法人への移行が10月1日付けで認められた。本45回大会はその第一回で、来年度からは公益性、社会への貢献がより重視され、予算案や、代議員の選挙方法、代議員会など大きく変わり.学会の運営方針も理事会での関与がより強くなる。現在日本アレルギー学会では学術委員会と大会長が大きなプログラム枠を作成し、一般演題もアブストラクトによりワークショップを組んだり、プレナリーセッションを設ける試みも開始されており、本学会でも今後検討して行く必要がある。
 第45回大会のテーマは「みんなが主役の皮膚アレルギー」で、会長の森田栄伸先生の会頭講演もなく、懇親会もVogel Parkで行われ、お神楽、八岐大蛇を鑑賞したあとは、日本海の冬の味覚が会場いっぱいに提供され、会員一同、多いに議論に花が咲いた。



日大の照井正先生FBより

 今回、森田先生が力を入れられたのはアナライザーを利用したパネルデスカッションで蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、膠原病、接触皮膚炎、重症薬疹の5つが取り上げられ、それぞれの領域でのHot topicsが取り上げられた。ただアトピー性皮膚炎のバリア、外用など、難しい問題も多く、アナライザーで大きく意見が分かれた話題も結構見られた。また演者も大御所ばかりで、もう少し若手の臨床の最前線で頑張っておられる方も参加されればより論点がはっきりしたかと考える。その他、膠原病が本学会で大きく取り上げられた事はあまりなく、今回の演題でも自己免疫疾患関連とならび、合わせて10題前後で、近年とみに発表が減少しているアトピー性皮膚炎とならび、来年以降はより多くの演題発表を望みたいし、そういう企画を考えて頂ければと思う。日本皮膚科学会が教育中心、研究皮膚科学会が基礎研究を主に取り扱う現状で、豊富な症例報告と活発な討論が特徴の本学会の意義は大きい。会員数も1,700名を超え、皮膚アレルギーの専門家を育てる上で、森田会頭の言われる「みんなが主役の皮膚アレルギー」の立場で次の世代のプロが育つ、学会としての環境作りが益々重要になるかと考える。演題は興味深い報告が多かったが、特に地方の大学以外の先生が頑張っておられるのが印象的だった。演者から話を聞くと、皆さん大学でアレルギー専門の先生に指導を受けておられた経験があるようで、初期教育の重要性を再認識するとともに、アレルギーの発症機序の解析、新たな治療の開発、予防・啓蒙活動などに興味を持ち続け、あらたな発見をこのような学会で発表し、論文化して行くMotivationを若い先生方にどう与え、育てるか学会でも考える必要がある。
 多くの素晴らしい演題の中でも、最近、我々の教室で検討しているOAS関連の発表で、雄勝中央病院からのセリ科スパイスのFDEIAはその責任アレルゲンの同定まで非常に苦労して突きとめられていた報告であり、その努力に頭が下がる思いで拝聴した。このような症例は日常診療でも多いと思われるが、放置されていると考えられ、アトピー性皮膚炎の合併する例などではOAS発症の低年齢化と重症化が増えている印象をもっている。結果として、果物などが食べられなくなることでQOLが障害され、場合により生命予後にも影響する。現在オマリズマブの蕁麻疹への治験が進行しているが、その先に是非このようなOAS治療への適応拡大を学会として進めて行きたいと考えているもう一つの話題として岐阜大学からの発表で、多種の植物アレルゲンに対して、RAST陽性、スクラッチテスト陰性患者が実は全てFalse positive でその理由として植物、花粉、昆虫などの交差抗原としてCross reactive Carbohydrate Determinant (CCD)に陽性であるとのことで、これは牛肉、豚肉などのほ乳類にある程度共通するα—Galと同様の糖鎖抗原との事であった。この患者ではα—Gal抗体陽性で牛肉、豚肉のRASTも4+で牛肉摂取による消化器症状があったそうである。日常診療でこのような多種のアレルゲンが陽性であるにも関わらず、症状がでない場合、このような機序がある事を知っておくことは重要である。この患者ではBet V1,Bet V2陰性、CCDであるMUXF3,Horse radish peroxidaseが陽性であった。


フォーゲルパークの懇親会にて

 今回は全員がポスター発表ではなく、口演のみの演題も多かった。聞きたかった演題が座長など、あるいは平行して他の会場で行われていたこともあり、聞き逃した演題の情報を電子ポスターなどで確認できる、あるいは全員ポスター発表と簡潔な口演形式にするなどの検討が必要と考える。専門医の先生や、地方から遠路学会に参加される先生は皆、そのような熱い討論を聞く事を最大の学会参加の目的にされている事を忘れてはならないし、貴重な時間をレベルの低い討論で奪うようなこともしては行けないと思う。最後に、毎回同じ事の繰り返しになるが、発表された貴重な報告は是非、日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌に、さらに、議論を深めて、英文で海外の雑誌に投稿していただきたい。


2015年11月