医局員コラム
第67回日本皮膚科学会西部支部学術大会
会頭:宇谷厚志 長崎大学教授
会期:平成27年10月17日ー18日
会場:長崎ブリックホールおよび長崎新聞文化ホール
大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗




 秋晴れの下、第67回日本皮膚科学会西部支部学術大会に出席した。韓国で開催されていた、第24回世界アレルギー学会(World Allergy Conference)での講演終了後、仁川空港から長崎入りした。私は2001年に第53回大会の会頭を務めさせて頂いたが、直前に9.11が起こり、海外からの招待者のキャンセルなど心配したが、皆さん無事来日して頂き、素晴らしい講演が聞けたことを懐かしく思い出した。
学会は宇谷先生の教室紹介と学会の聞き所などの話、そして今回の学会テーマである『本質を見抜く』ことの重要性をお話になられた。(以下、会頭挨拶より一部引用する)。『 日常診療の中で「こう言われてるけど,本当かな?」と思うようなことに出くわすことがあります。今回の学会では『本質を見抜く』 See through the Essence behind Common Knowledge をテーマに掲げ、講演では出来るだけタイトルに簡単な疑問を挙げていただくようにお願いしております。中略、 今回は、西部支部の大学から臨床・基礎を問わず研究成果を報告していただく企画を作りました。「大学は研究する場」と認知されてはいますが、最近では研究は専門医の”次のレベル”という考え方が多くなってきているようです。時間的、物理的な制約を乗り越え、大学皮膚科教室で現在行われている研究活動を発表していただき、本質は何かを考える「好奇心」があふれる皮膚科医師の育成の契機になれば嬉しく思います。』


 学会は引き続き、宇谷先生のご専門のマトリックスに関するシンポジウムが開始された。強皮症を除き、全て遺伝性の疾患中心の内容であったが、特に長崎大学からは宇谷先生が厚労省研究班長を務められているPXE(弾力線維性仮性黄色腫)の新規病型発見とリードスルー法という新たな遺伝性疾患治療法の開発に関する講演を長崎大学皮膚科の若手のお二人が話された。宇谷先生は長崎大学に着任されてまだ5年とお聞きしているが、元気な若手が育ってきているのが良くわかり何よりである。シンポジウムはマトリックスのほか悪性腫瘍の新規治療薬、感染症、皮膚病理学が企画されていた。私は皮膚病理学にも参加した。MM in situと色素性母斑の講演で玉田先生の鑑別が困難な場合、臨床写真がないと最終診断を下すのは難しいという結論は、6月の網走の日本臨床皮膚科医学会の教育講演で熊切正信先生が仰った「最後はそのプレパラート全体から悪性と感じ取る事が出来る感性である」という話と重なる部分があった。また陳先生の動脈炎と静脈炎の鑑別にEVG染色が有用で、血管壁の弾力線維が静脈でよりはっきりしていること、内弾性板の染色所見は結構難しい事をお話されていた。
 一般演題はシクロスポリン内服が有効であった小児剣創状強皮症の1例(徳島大)、ケミカルピーリングでの治療を試みたパニツムマブによる痤瘡様皮膚炎の1例(東北大)、ミノマイシン内服とドボベット軟膏外用が奏功した融合性細網状乳頭腫症(大阪市大)など治療に関して有益な報告が多かった。大阪大学からは、高橋 綾先生が難治性ロドデノール誘発性脱色素斑患者7例の臨床的検討、山岡先生がIgG 型抗PS/PT 抗体が陽性であった皮膚型結節性多発動脈炎の3例、神谷香先生がアフィニトールの副作用としての皮疹の検討を発表された。特に神谷先生は今回が学会初デビューであったが、難しい課題を短期間で良く纏められ、発表前も全く緊張されなかったようで、皆さん感心しておられた。是非この発表を契機に結節性硬化症の治療や研究にも取り組んで頂きたい。


発表前の笑顔の神谷先生


展示ポスター

また一般演題の前に1〜2題ワークショップとして各大学の若手による研究発表があり、越智先生がInnate lymphoid cell 由来サイトカインによる表皮角化細胞・真皮線維芽細胞でのコルチゾール再活性化酵素発現の検討を発表された。
 懇親会は世界遺産に登録されたグラバー園で開催された。私も53回の会頭を務めた時にグラバー園での懇親会を考えたが、雨の多い長崎ということで諦めた経緯があり、また当時BSE問題で提供できる料理にも苦労した事が思いだされたが、皆さん素晴らしい長崎の夜景そして長崎港からの花火を楽しまれた。


普賢岳遠望

2015年10月20日掲載