医局員コラム
9th International Conference on Proteoglycans
and 10th Pan-PacificConnective Tissue Societies Symposium
President::Eok-Soo Oh: Prof.
Department of Life Science Ewha Womans University Seoul Korea
Congres Venue: Ewha Womans University Seoul Korea
Date.:Aug. 23-27,2015
大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗

大阪大学からの参加メンバーと、Ewha Womans University にて

第9回国際プロテオグリカン学会、第10回汎太平洋結合織学会が韓国ソウルで開催された。今年6月17日に逝去された故佐野榮春大阪大学皮膚科名誉教授のご専門が強皮症などの結合織疾患であり、その研究対象がコラーゲンやムコ多糖などの結合織代謝であった関係で私も日本結合織学会の会員である。今回は学会の運営にあたられたソウル大学皮膚科のJin Ho Chung 教授から講演を依頼され、山岡、林、楊、生長の先生方と参加した。
 私は[Periostin facilitates skin sclerosis via PI3K/Akt dependent mechanism in a mouse model of scleroderma]というタイトルで講演をおこなった。現在,皮膚科で結合織研究,特にプロテオグリカンの研究を行っているラボは世界的にも減少しているようである。ドイツから表皮水疱症、基底膜の研究で有名なフライブルクのBruckner-Tuderman教授と私が参加していた以外は地元韓国ソウル大学皮膚科のChung教授のラボと大阪大学、そしてEndostatinアナログの強皮症治療への応用を講演された横浜市大皮膚科の山口由衣先生くらいでやや寂しい印象は拭えなかった。ただ招待会では、永井祐先生(東京医科歯科大名誉教授)や木幡先生(東大名誉教授) 鈴木 旺 先生(名古屋大学名誉教授)など佐野榮春先生と同時代に活躍された日本の結合織研究の黄金時代を築かれた先生方の名前をお聞きし、懐かしい思いがした。我々は新しい細胞外マトリックスであるペリオスチンがコラーゲンAssemblyに関わるデコリンというプロテオグリカン発現を抑制することでブレオマイシン誘導性強皮症モデルを増幅させる可能性を報告したが、同じデルマタン硫酸を2分子GAGとして持つバイグリカンにはそのような作用を持たないことをChung教授が報告され、討論が進んだ。デコリンは36 kDaのコア蛋白質にコンドロイチンまたはデルマタン硫酸鎖を側鎖に一本持つ。コンドロイチン4硫酸を持つデコリンは成長軟骨より単離され、関節軟骨や腱 からは、デルマタン硫酸鎖をもつデコリンが単離された。デコリンは、骨、腱、鞏膜、皮膚、大動脈、角膜に多く存在している。スモールプロテオグリカン II, PG-S2, PG-40またはDS/CS-PGIIとも呼ばれる。in vitroの実験で、I型及びII型のコラーゲンと結合し、コラーゲン線維の形態の制御作用の役割が示唆されている。強皮症などではコラーゲン腺維束がうまく束ねられず、細い線維束の幼弱なコラーゲンが増加している。また横浜市大の山口先生はXVIII型コラーゲンのC末フィラグメントであるEndostatin 由来ペプチドがブレオマイシンモデルの皮膚硬化を抑制する事を報告され、臨床応用の可能性が検討されているとのことであった。糖鎖修飾はEpigenetic新たな蛋白合成においても重要であり、今後も研究を継続して行きたいと考える。
楊先生の発表はペリオスチンによるデコリンの制御調節で口述講演に選ばれ、トラベルグラントも獲得された。

私はInvitation Dinnerに招かれて参加できなかったが、山岡、林、楊。生長の若手の先生方は韓国グルメを楽しまれたようである。会場となったEHWA女子大は世界で最も大きい女子大ということで、キャンパスも美しく、また学食やノベルテイグッズも充実していた。

Bruckner-Tudermanご夫妻(向かって右前二人)山口先生、Granville 先生、Chung先生、Fisher 先生)

大阪大学大学院医学系研究科教授 片山一朗
平成27(2015)年8月31日