医局員コラム
第113回日本皮膚科学会総会
会頭 岩月啓氏  岡山大学皮膚科教授
会場 京都国際会議場
会期 2014年5月30日〜6月1日 
テーマ —皮膚科の職人魂—
大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗

  第113回日本皮膚科学会総会が5月30日から6月1日までの3日間、新緑から初夏の京都国際会議場で開催された。会頭の岩月啓氏教授、事務局長の青山裕美先生、実行委員長の山崎修先生には5,000人(実際には6,000人?)を越す参加者を迎えられ、大成功のうちに大会を終えられたこと、心よりお祝いと御礼を申し上げたい。今大会のメインテーマは「皮膚科の職人魂」で、会場の各所にそのロゴが見受けられた。また教室員が主演のプロモーションビデオや地元児島のジーンズ、コングレバック、記念白衣、きびだんごなど会頭のお人柄、教室員の一致団結ぶりを示す岡山色に溢れた学会であった。私も病院用のジーンズを早々に購入した。


 学術大会は例年通り岩月教授の会頭講演から開始された。座長を務められた荒田次郎先生は岩月教授同様フランス学派の先生でその思い出を交えながら岩月教授の紹介をされたのが印象的であった。講演ではまず岡山大学の歴史を紹介され、研究皮膚科学会の谷奥喜平記念講演で有名な谷奥喜平教授、野原望教授の時代に岡山大学の皮膚科が大きく発展し、全国に多くの教授を輩出されたことを述べられた。岩月教授は我々の世代では珍しく、きわめて日常臨床を大事にされる先生であり、また次世代の若手医師や学生教育に熱心な先生で、その哲学を述べられ、会員に大きな感動を与えていただいた。またこれは以前から我々も考えていたことで、今では入手不可能でかつ読むことが困難な皮膚疾患の、原語による原著の日本語訳(岡山大学OBの大熊登などの先生方のご尽力と聞いている)を特にフランス人皮膚科医が記載した論文に限定して、会員に配布されたことは素晴らしい事業で、今後の学会の事業のあり方を考える上でも貴重なことと考える。実際岩月教授ご自身がパリに行かれ、原著の収集やサンルイ病院などに残された膨大なムラージュもご覧になり、撮影されてきたそうである。

Pririgos Besnierの項」

会頭講演に引き続き、皆見賞の受賞講演、ランチョンセミナー、教育講演が漸次開始された。今大会は岩月教授ご尽力の魅力的なプログラムによるところがきわめて大きいと思われるが、初日のランチョンから多くの会員が参加し、広い京都国際会議場が最終日の最後のセッションまで人で溢れ、素晴らしい会となったことは岡山大学の先生方にとってもこの数年のご努力が報われ、本当に良かったと思う。

 教育講演も昨年までと異なりオーガナイザーが積極的に議論を盛り上げられ、上から目線の一方通行でなく、演者と聴衆が双方向性の議論を楽しめる本来の学会に戻りつつあると感じられた。岩月教授が提示された学会プログラムの見直しは皮膚科学会の将来計画委員会で進められていくと聞いている。ぜひ受け身でなく若手参画型であり、なおかつ会員全体が相互に皮膚科学の伝統、職人魂を継承していける学会にして頂きたいと願う次第である。実際私と東京医科歯科大学の横関博雄教授がオーガナイザーをつとめた教育講演「汗関連疾患の謎に迫る」は若手から大御所の教授まで、他人の仕事の引用でなく、それぞれご自身が手を汚され、ご自身の哲学を述べられた講演で、質疑応答も時間を超えて、盛り上がり、大変満足したセッションであった。他の教育講演もオーガナイザーの工夫の溢れたセッションが多かったそうで、会員の先生方の評判も「素晴らしかった」という賞賛の声ばかりであった。また岩月教授が大切にされているアジアの皮膚科医の連携では[Agora for Asian Dermatologists]のセッションが設けられ、教室の揚先生も発表した。例年空席の目立つ土肥記念国際交換講座は今年はこれも岩月教授のアイデアで、場所をウェスチン都ホテルに移して、行われ、会場では軽食を楽しみながらカリフォルニア大学サンジエゴ校のGallo教授のライブ講演を楽しむことができ、今後の土肥記念講演の参考になったかとおもう。私は他の会議で聞くことができなかったが、アブストラクト賞として口頭発表の機会が与えられた若手の先生には大きなモチベーションの向上に繋がったかと思う。

 一般演題はすべてポスター発表であり、今回もデジタルポスターが採用されていた。昨年の早石祥子先生に続き、今年も藤森裕梨先生が「皮膚潰瘍を合併した膠原病疾患における血清HMGB1の推移」でポスター賞を受賞された。終始指導された山岡俊文先生ご苦労様でした。例年通り、すべてのポスターを見て回ったが、阪大の発表はどれもレベルが高く、来年もまたポスター賞をめざし頑張っていただきたい。もちろん英文論文にすることが大前提であるが。

最後に繰り返しになるが、この数年ややマンネリ化しつつあった皮膚科学会総会が会頭のアイデアでかくも素晴らしい会になるということを実感できた113回大会であった。岩月教授と岡山大学皮膚科学教室の先生方に改めてお礼を申し上げたい。




大阪大学大学院情報統合医学皮膚科 片山一朗
平成26年6月5日掲載