教育講演も昨年までと異なりオーガナイザーが積極的に議論を盛り上げられ、上から目線の一方通行でなく、演者と聴衆が双方向性の議論を楽しめる本来の学会に戻りつつあると感じられた。岩月教授が提示された学会プログラムの見直しは皮膚科学会の将来計画委員会で進められていくと聞いている。ぜひ受け身でなく若手参画型であり、なおかつ会員全体が相互に皮膚科学の伝統、職人魂を継承していける学会にして頂きたいと願う次第である。実際私と東京医科歯科大学の横関博雄教授がオーガナイザーをつとめた教育講演「汗関連疾患の謎に迫る」は若手から大御所の教授まで、他人の仕事の引用でなく、それぞれご自身が手を汚され、ご自身の哲学を述べられた講演で、質疑応答も時間を超えて、盛り上がり、大変満足したセッションであった。他の教育講演もオーガナイザーの工夫の溢れたセッションが多かったそうで、会員の先生方の評判も「素晴らしかった」という賞賛の声ばかりであった。また岩月教授が大切にされているアジアの皮膚科医の連携では[Agora for Asian Dermatologists]のセッションが設けられ、教室の揚先生も発表した。例年空席の目立つ土肥記念国際交換講座は今年はこれも岩月教授のアイデアで、場所をウェスチン都ホテルに移して、行われ、会場では軽食を楽しみながらカリフォルニア大学サンジエゴ校のGallo教授のライブ講演を楽しむことができ、今後の土肥記念講演の参考になったかとおもう。私は他の会議で聞くことができなかったが、アブストラクト賞として口頭発表の機会が与えられた若手の先生には大きなモチベーションの向上に繋がったかと思う。
一般演題はすべてポスター発表であり、今回もデジタルポスターが採用されていた。昨年の早石祥子先生に続き、今年も藤森裕梨先生が「皮膚潰瘍を合併した膠原病疾患における血清HMGB1の推移」でポスター賞を受賞された。終始指導された山岡俊文先生ご苦労様でした。例年通り、すべてのポスターを見て回ったが、阪大の発表はどれもレベルが高く、来年もまたポスター賞をめざし頑張っていただきたい。もちろん英文論文にすることが大前提であるが。
最後に繰り返しになるが、この数年ややマンネリ化しつつあった皮膚科学会総会が会頭のアイデアでかくも素晴らしい会になるということを実感できた113回大会であった。岩月教授と岡山大学皮膚科学教室の先生方に改めてお礼を申し上げたい。
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