医局員コラム
The 31th International Diploma Course in
Dermatology and Dermatosurgery, Bangkok, Thailand
大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗


 大会長を務める第39回日本研究皮膚科学会を間近に控える11月下旬からの1週間バンコクでのDCDDに講師として出席した。このアジア諸国における国際的な若手皮膚科医を養成する教育コースは今から30年前に当時の小川秀興順天堂大学皮膚科教授(現理事長)がスカイクラブ会長であった安田利顕東邦大学名誉教授(前日本皮膚科学会理事長)とタイのInstitute of Dermatology のPreeya先生を中心に開始されたと聞いている。今年で31回目となるが、大体、東南アジア、最近は小川先生の関係でタンザニアやギニアなどアジア以外の国々からも参加する方が増えているそうである。ちなみに今年は当然タイからの参加者が最も多く12名で、ついでミャンマーが5人、パキスタン、タンザニアが3人、バングラデシュ、フィリピン2名、ギニア、スリランカ、カンボジア、マレーシア、セイシェル各一名の11か国32名であった。このうち日本皮膚科学会、順天堂大学、タイ国際開発協力機構が提供する奨学金受領者が9名、残りの23名は自費とのことであった。またJICAからも全面的なサポートがあるとのことである。1年間にわたるコースはそれぞれの出身国からバンコクに来られて生活しながらの受講ということで、裕福な階級層からの方と推察するが、逆にいうと東南アジア諸国でそれだけの受講料を払ってでも参加するくらいレベルの高いコースとの評価が定着しているためかとも考える。日本側の講師は小川秀興先生や北島康夫先生などの重鎮の方以外に島田先生など我々の同世代の先生が講師を務められている。私の前週は岡山大学の岩月先生が講師を務められており、彼から講義方法やバンコク諸事情などご教授いただいた。岩月先生の講義資料のハンドアウトを見せていただいたが、相当高いレベルで、最新の分子生物学のデータなども随所に盛り込まれており、受講者に聞いた話では、難しいが大変興味があり、チャンスさえあれば日本でPhDコースに進みたいという方も結構おられた。実際まだ皮膚科を選択されていない方もおられたが、彼らの理解力は素晴らしく、質問なども的確で、こちらが驚くほどの知識を持っている方もおられた。やはり世界は広く、日本にいるとガラパゴス化する危険性を再認識した。皮膚科の若い先生方も留学だけでなく、身近な所からどんどん世界の先生方との交流を深めて頂きたいと思う。  
私の講義は以下の内容で1.5時間x12コマを行ったが、日本での講義に比べ、皆さん真剣に話を聞いてくれ、途中でもどんどん質問をしてくれるスタイルで、毎回結構ハードではあるが久しぶりに味合う、心地よい充実感、達成感を伴う講義であった。日本でもこれからは、どんどん英語で講義するような指導が文科省から来ているが、良いことだと思う。ただ30年の時間が経過し、そろそろタイの皮膚科医がリーダーシップをとりたいとの希望も出てきているようで、今後あらたな方向性の検討が必要な時代が来ているようである。


Dec.1 (Mon)
    PM 1) Introduction himself and Allergic skin disease. Overview of contact dermatitis and drug eruption.

Dec.2 (Tue)
    AM 2) New role of histamine in the skin: Overview of urticarial
PM 3) Collagen Vascular Disease: Scleroderma

Dec.3 (Wed)
    AM 4)Vitiligo:guide line and treatment and Sjögren’s syndrome
PM 5) Itch and stress management

Dec.4 (Thu)
    AM 6) Pathogenesis and guideline of atopic dermatitis Examinations and discussions

受講生の皆さんと。若い先生から訳ありの年輩の先生まで、皆さん輝く瞳と笑顔で講義を楽しんでくれたようです。

Mingkwan Wichaidit先生(左から2人目、IOD所長、タイ側のDCDD代表)、小川先生、片山。

ある日のランチメニュー。トムヤンクンしかタイの料理は知りませんでしたが、職員食堂のおばさんが毎日日替わりで、差し入れてくれるタイの家庭料理?は大変美味しかった
 
最終日、ミャンマーからの5人の先生と.ヤンゴンから2名マンダレーから3名とのこと。ミャンマーは皮膚科専門医が40人程度で学会組織もないが皆さん、大変優秀であった。

 

大阪大学大学院医学系研究科教授 片山一朗
平成26(2014)年12月6日掲載