医局員コラム
第36回皮膚・脈管膠原病研究会を終えて
会場:大阪ライフサイエンス

大阪大学大学院医学系研究科分子病態医学
皮膚科教授 片山一朗


 2013年1月25日と26日の2日間に亘り上記学会を開催した。山岡先生(補佐、室田先生)を事務局長とし、二上さんをはじめとする秘書さん、西田さんを中心にこの2年ほど準備をしてきた。開催案内に書いたように、この研究会(学会ではない)は私が医者になった年に第一回大会が開催され、北里大学に異動した1987年からほぼ毎年参加している思い入れのある会である。以前は故安田利顕先生が会員であった六本木の国際文化会館が会場であり、西山茂夫先生、植木宏明先生、井上勝平先生や西岡清先生、西川武二先生などが一番前の席を占められ、若い発表者は緊張感にあふれ、高揚した気持ちで発表した。診断や解釈、が不十分であると徹底的にしかしきわめて教育的な指導を受けることができた。また終了時間も予定時間をはるか超える事が多かったが、充実した時間を過ごすことができた。
 大会は血管炎のセッションから開始され、朝9時から多くの参加者に登録頂いた。これも例年通り陳先生、勝岡先生、川名先生がほぼすべての演題に多くのコメントをされていた。ただ名誉会員のある先生が「治療や新しい病因論の討論がなく、遠路出席した甲斐がないと」遠回しに言われた。ある意味発表、討論がマンネリしてきたことや本会が仲良しクラブ化してきた(?)ことへのご意見と拝聴した。このような意見は懇親会でも聞き、多いに再考したいと考える。やはり若い先生が新しい切り口で症例や研究成果を提示し、偉い先生を打ち負かすくらいの議論をしていくことが必要だろう。その点で、2日目のモーニングセミナーの室田先生の講演は血管炎や膠原病の温度過敏に新たな視点を投げかけるもので、もっと多くの先生に聞いて頂きたい充実した内容であった。
 また今回、話題となったのが血管炎の新しいChapel Hill分類2012で、私自身アメリカ式の即物的な病名や臨床を無視した分類には?????であったが、皮膚科医が一人もいない委員会で決められた事が原因とのことで、残念であった。参加された先生から間接的に聞いた話ではChurg-Strauss SyndromeがEosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis (EGPA),WegnerGranulomatosisが Granulomatosis with Polyangiitis、Henoch-Schönlein purpura がIgA Vasclulitisと言う病名に変わるなど極力最初の記載者の名前を外すようである。このことは特に蛍光抗体直説法ができない施設では診断できない、あるいはHyper-γglobulinemic purpuraなどIgAの沈着が見られる皮膚の血管炎も同じ病名になる可能性がある。同じ事は病態不明のままMikulicz病や抗SSA抗体陰性の一部のSjogren症候群がIgG4関連疾患という病名になりつつある現状に近い。このような流れは、ガイドライン、治療アルゴリズムに沿うよう、病名が病因論的に修正されていることによるかと思うが、、EBMとNet医療が全盛の昨今、抗しがたい流れなのかもしれない。
 今回は話題にならなかったが抗セントロメア抗体陽性のシェーグレン症候群の検討(認識する抗原エピトープの差)や、皮膚筋炎のあらたな自己抗体と皮膚症状発現の検討、皮膚型結節性動脈周囲炎とLivedoido Vasculopathyなど、討論すべきことはたくさんあるはずだが、関連演題が殆どなかった。やはり指導者の努力が必要と思うと同時に、ワークショップなどの形式で毎年テーマを決めて徹底的に討論するなどの工夫が必要なのだろうか?この点はまた世話人会で意見を聞きたいと考えている。
阪大からは越智、井上、山鹿、花房、山岡の各先生が発表されたが、それぞれ良く考察された立派な発表演題で是非英文論文として記録に残して頂きたい。特に山岡先生の発表されたHIVが見いだされたSebopsoriasisの発表は診断名や組織反応の是非に議論がシフトし、なぜSeboposriasisという病名をあえて付けたかという本質的な議論にならなかったのが残念であった。HIVで乾癬と脂漏性皮膚炎が重症化するのはよく知られたことであり、Pityrosporum感染症などが両疾患で発症因子である可能性などを包含するのではと考えている。例年に比べ、若い男性医師の出席が目についたが、いくつかの重要な宿題が残った大会であった。2日間に亘り、学会を手伝って頂いた医局の先生、秘書さんには心からお礼を申し上げたい。


開会式


熱い討論

2013年1月