医局員コラム
第25回日本色素細胞学会 
会頭:片山一朗 大阪大学教授
会場:大阪大学 銀杏会館    
会期:2013年11月16日−17日

大阪大学大学院医学系研究科分子病態医学
皮膚科教授 片山一朗


 第25回日本色素細胞学会を大阪大学銀杏会館で開催させて頂いた。学会は紅葉のきれいな万博記念公園を望む、ホテルエキスポパークでの理事会から始まった。来年はシンガポールで国際色素細胞学会が開催される関係で、日本での色素細胞学会はなく、2015年度は札幌医大の山下利春教授を会頭として同じ日程で開催されることが決定された。

 今回は33の一般演題に加え、Key Note Lecture 3題、国際シンポジウム「Autophagy」3題、ランチョンセミナー2題、美白化粧品による白斑関連演題3題の発表があった。昨年の長浜バイオ大学での24回大会同様、若い研究者(特に男性)の参加、発表が多く、聞いていて気持ちがよかった。また今年から一般演題も英語での発表が多く、皆さん英語で充分な討論をされており、いよいよこの学会も国際化してきたと感じた。朝一番のKey note lecture で講演された山形大学の鈴木教授の内容は、蒙古斑の起源から日本人の皮膚色の決定因子まで科学的な基盤に立ち、かつ文化人類学的な要素の強い内容であり、極めて興味深い内容であった。あとから聞いた話では、調査に行かれたのはモンゴルの首都ウランバートルからさらに西に1000キロ移動が必要な場所で、昨今、報道で良く耳にする新疆ウイグル自治区に近い所とのことであった。私自身は蒙古斑が進化論的にどのような意味を持つのか興味があったが、皮膚色決定に関わる遺伝子や皮膚癌発症のリスク遺伝子など今後多くの貴重なデータが得られるものと期待される。
 ランチョンセミナーは今回事務局長を務めた種村篤先生の留学していたロサンゼルス、John Wayne Cancer InstituteのDave SB Hoon教授がメラノーマの発症、脳転移などの進展に関わるメラノーマ細胞のEpigeneticな変化に関する最新のデータを講演された。彼のラボには現在教室の清原君も留学しているが、メラノーマなど、ガンに特化した臨床、研究を行っており、日本からは外科系の留学生が多いとのことであった。午後の演題はメラニン合成、分解に関わる基礎的な発表が多く、慣れない用語も多く、さらなる勉強が必要と感じた。シンポジウム「Autophagy」では、この分野の世界的な権威である大阪大学の吉森保教授が最新のデータを中心に講演され、最後のスライドでは、ケラチノサイトのAutophagyの機能により皮膚色が決定されると言う大変興味深い実験結果を示された。(J Invest Dermatol 2013)。また今回、米国UC Irvine校のAnand Ganesan先生は網羅的な遺伝子解析の結果、見いだされた、Autophagy regulator であるWIPI1のsiRNAを用いた研究でAutophagyがメラニンの合成に関与していることを示された。教室の揚先生は結節性硬化症での白斑にラパマイシンが効果を示すことより、Autophagy誘導に関わるmTOR機能の解析モデルとして培養メラノサイトのメラニン色素合成に対するsiTS1/TS2を用いてのデータを発表された。日本語のみでなく英語も堪能で、立派に質疑応答をこなされ、発表後はいくつかの共同研究の話があったようである。このほか東北大学の皮膚科からはメラノソーム輸送に関わるRab11aの制御にTLR2など自然免疫を介するシグナルの重要性や脂肪組織由来幹細胞から単離したMuse細胞が10種類の因子の存在下でメラノサイトに分化することを見事に証明した発表をされ、多くの質問が飛び交った。とくに多能性幹細胞で癌化しないMuse細胞を用いることで白斑の治療が可能になるかと思うし、メラノサイトの発生や分化の研究にも多くの情報を提供しうる素晴らしい研究であり、今後の発展を期待したい。このほか岐阜大学の國定教授は山形大学の鈴木先生と共同研究されているK5プロモーターにより、SCF遺伝子を導入したマウスが基底層にメラノサイトを持つこと、4種類の皮膚色をもつフェノタイプが得られたことを報告され、今後の研究に応用されることを話された。私自身は胎生期にメラノサイトの幹細胞が毛嚢バルジ領域に遊走するのはSCFなどの濃度勾配で決定されると理解していたが、SCFの基底細胞での発現によりバルジ領域からどのようにメラノサイトの基底膜上の分布が決定されるのか興味がある。3日間にわたり協力頂いた西田健樹技官、二上さん、荒木さん、杉山さんを初め多くの医局の先生に心より感謝します。

理事の先生方と迎賓館にて

大阪大学大学院情報統合医学皮膚科 片山一朗
平成25年11月19日掲載