医局員コラム

2nd EASTERN ASIA DERMATOLOGY CONGRESS 皮膚科教授 片山一朗

President: Jianzhong Zhang(張建中)
Professor, Department of Dermatology
Peking University People's Hospital
Venue: China National Convention Center, Beijing
Date: 2012. June 13-15


6.14日 招待会での張教授の挨拶風景
第2回東アジア皮膚科学会に参加した。会頭の張教授は膠原病が専門で福島医大に留学されていた時以来の友人であり,昨年のWCDで事務局長を努められた韓国延生大学のSoo-Chen Kim教授や四川大学のRan-Yang Ping教授など日本に留学されていた時知り合った先生もたくさん参加されていた。この会は以前からあった日韓皮膚科学会と日中皮膚科学会が発展的に合同化した学会で2010年、第一回大会が 古江増隆九大教授を会頭として博多で開催され、今回が2回目になる。アジア地域の合同学会はAsian Dermatological Congress (アジア全体), Regional Meeting of Dermatology(環太平洋地域)など他にもいくつかあるが、今大会には1,500人近い参加者があり、日本からは200人前後の参加と100題前後の発表があったと会頭の張教授が報告されていた。次回は2014年、韓国がHostとなり、済州島で開催される。
 私はアトピー生皮膚炎のセミナーで張教授とともにドイツのWollenberg, 韓国のKim先生の座長を、色素細胞のセッションで中国Gao教授と座長を務めさせていただいた。アトピー性皮膚炎のセッションではタクロリムスのProactive therapyがテーマで、この療法の登場により患者のQOLのみでなく、医療経済的にみても大きな改善効果があること、週一回の外用でも十分効果があることが報告され注目された。なお張教授より中国ではアトピー性皮膚炎の診断が必ずしも正確に診断されておらず、あるいはアトピー性皮膚炎自体が少なく湿疹と言う病名で片付けられ、十分な治療が受けられない患者が多いとのコメントがあった。Dr. Wollenbergからは中国はまだTh1優位の状態で今後患者が増加するだろうとのコメントがあった。実際2年前上海で小児科の先生方と話しをする機会があったが、彼らもアトピー性皮膚炎という言葉は使用せず、乳児・小児湿疹という病名と,その原因は食物アレルギーであると言っていた。かつて日本でも同じ議論があったことを思い出したが、内因性と外因性アトピーを考える時、地域差や工業化の程度なども考慮する必要があるかもしれないと感じた。
 色素細胞関連では中国からCOX2阻害薬がメラニン産生を制御するとの興味深いコメントがあったが、演者が代理の方で十分なコメントのなかったのが残念であった。阪大からは室田、谷、山岡先生がORALに選ばれたが皆さんうまく発表され、質疑応答も活発であった。花房、楊、糸井先生はポスター発表された。阪大皮膚科からの海外での発表も最近は増加し、皆さんプレゼンがうまくなっており、何よりである。また海外発表の大きなメリットとして発表前に十分文献的考察をしておけば、そのまま英文論文として投稿できることで、阪大の論文発表の増加に貢献している。自分で経験した症例、発見した知見、生命現象を英語で論文として報告することは大学人の義務であることを学生や医局の先生にも言っているが、その成果がでてきたかと考えている。
 北京観光は到着した日にそのまま万里の長城見物に出かけたが、現地に到着したのがケーブルカーの最終便時間を一分過ぎており、楊さんの懸命の交渉も実らず、はるか山頂の長城を見上げるのみで終わってしまった。ちなみに無事(?)観光された先生の話では長城はラッシュアワーなみのものすごい人であふれかえり、K大学の先生は50m近く崖を滑り落ち、危うく大けがを免れたとのことであった。
 最終日夜は国賓招待に使われる釣魚台でJapan Nightが企画され、会場では見かけなかった先生も多く見かけた、庭園は蘇州の山水をモチーフに造られたそうでライトアップが大変美しかった。一般の観光客は入園不可で、中国側と交渉していただいた岩月会頭の御尽力とあとで聞いた。北京は10数年ぶりの再訪だったが、町並みが驚くほどきれいになり、街中に溢れていた自転車も姿を消していた。以前の公務員体質丸出しのホテルや商店の店員や受付の対応が大きく改善し、むしろ地方からでてきたばかりのようなスタッフが多く、好感がもてた。
次回の済州島の第3回大会を楽しみに会場をあとにした。

2012年6月