医局員コラム

臨床アレルギー学は面白い

大阪大学大学院医学系研究科分子病態医学
皮膚科教授 片山一朗


 花粉症、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患は国民病とも呼ばれて久しいが、患者はいまだ増加傾向にあり、その難治化や慢性化が問題となっている。皮膚科領域でもアトピー性皮膚炎、蕁麻疹、薬疹、接触皮膚炎、食物アレルギーなどあらたな病態、病因論、治療法が報告されている。
 最近のトピックスとしては食物アレルギーが経皮的な感作で生じる可能性が報告され、フィラグリンの遺伝多型をもつ患者ではペット飼育、イヌではなく、ネコがアトピー性皮膚炎のリスクを高めること、そのような患者に早期のスキンケア介入を行うことで、喘息、鼻炎への進行を阻止できる可能性が報告されている。このような流れの中、21世紀となり、急速に進むグローバリゼーションと社会・医療経済・地球環境のダイナミックな変化の中に生活する患者(患者予備群)の現状に見合ったアレルギー疾患の発症と進展を防ぐ新たなプロジェクトが必要とされている。 
 また限られた医療資源をより効率的に活用するための医療経済学的な見地からのアレルギー疾患患者の動態や治療の実態解析も重要な検討課題と考えられるが、二つの研究を有機的に結ぶ成果は得られていない。この問題の解決のためにはアレルギー診療に関わる多くの医師やメデイカルパートナーが診療科を越え、横断的にアレルギー患者の治療経過と生活習慣・悪化因子の詳細な解析を行い、科学的な根拠に基づく生活指導と治療方針を示すことで、より効率的な医療を国民に提示していくことが必要であり、かつ重要な課題と考える。我々も大阪大学の新入生を対象としたアレルギー検診を2011年度から開始したが、彼らの生活習慣、小児期から思春期におけるアレルギー歴や治療の現状などであらたな知見が見いだされ、引き続き検討を行いたいと考えている。ただ一つ杞憂する点として、日本アレルギー学会への皮膚科医の参加が近年とみに減少していることがあげられる。連携学会である日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会では逆に参加者も増加しており、また発表内容も素晴らしい演題が増え、その成果は皮膚科関連の機関学会誌や本誌「皮膚病診療」に多くの論文が投稿されている。是非皮膚のアレルギーのプロフェッショナルである皮膚科医が他の分野の先生方とも交流し、日本のアレルギー学のレベルを上げて頂きたいと考える。今年マスコミなどでも大きく取り上げられ、患者認定などで皮膚科医が大きな役割を演じている「茶の雫石鹸」による皮膚アレルギーの問題は、そのような連携の良いモデルかと考える。時代は収益を上げる医療が巾を効かせ、利益率が低く(保険点数が低い)時間のかかるアレルギー疾患の診療は敬遠される傾向にあるが、是非若い先生方がコの分野に参入し、社会貢献のみならず新たな稼げるアレルギー診療を創出し、病院の経営改善にも貢献していただきたいと願う次第である。
2011年