医局員コラム

声欄(皮膚病診療)

大阪大学大学院医学系研究科分子病態医学
皮膚科教授 片山一朗

スギ花粉飛散時に見られる眼瞼の皮膚炎

 2006年2月号の「とくにスギ花粉飛散時に見られる眼瞼の皮膚炎について」を興味深く拝読させていただきました。忙しい日常診療の中で多数の症例を纏められたことに心より敬意を表します。
 眼瞼部皮膚炎に関しては以前から小生も興味を持っており、今回の季節的な患者数の変動の結果は大変有用な情報かと思います。
 小生は以前に勤務していた病院でシェーグレン症候群の患者さんを診察させて頂く機会がありましたが、その時、眼の乾燥感の強い人に眼瞼部の皮膚炎がある程度認められ、臨床的には3型に分けられることを報告しました1)。その時はシェーグレン症候群が女性に多いことより、化粧品の接触皮膚炎の鑑別が重要と考え、検討しましたがスギのIgE-RASTや花粉症に関しては有意な結果は得られなかったと記憶しております。その際このような皮膚症状が欧米ではUpper eyelid dermatitis syndromeとして記載されており、その背景には多様な因子が存在することを知りました2)。点眼薬の接触皮膚炎では下眼瞼、脂漏性皮膚炎などでは上眼瞼に病変が多いかと思いますが、シェーグレン症候群ではどちらかというと両者が混在してみられました。今回の浅井先生の症例をみますと、圧倒的に女性が多く、臨床像も多様で、季節的な要因があるかとは思いますが、接触皮膚炎、シェーグレン症候群などの背景因子も解析対象に加えて頂き、今後スギ皮膚炎との臨床像の差を明らかにして頂ければと思います。本来このような長期間に亘る多数例の臨床研究こそ大変重要なものであり、症例の多い開業の先生と大学が共同研究出来れば、巻頭言に栗原先生が書かれている新しい連携の構築にもつながるかと思います。あらためて大学勤務医も頑張らなければと思い、自戒の念を込めて筆をとらせて頂きました。。

1) Katayama I. Int.J. Dermatol. 33:421-,1994
2) Rietschel RL & Fowler Jr. JF Fisher’s contact dermatitis 4th ed. pp 307 1995

吹田市 片山一朗

2006年